Deep Tech起業家直伝!トレンドに踊らされず、地に足を着いた事業を創る思想法
2025/08/25
Deep Tech起業家直伝!トレンドに踊らされず、地に足を着いた事業を創る思想法
シードVC「THE SEED」は、2025年6月28日に「スタートアップ関西 2025 春」を開催しました。
本記事では、イベントで行われたセッション3:研究セッション「大学時代の研究を活かして起業~社会実装までのリアルな舞台裏~」についてまとめています。「やめておいたら?」という周囲の否定的な声にも関わらず、大学時代の研究を活かし農業分野で起業した中道氏。一般的に難しいとされる分野で、いかにして事業を軌道に乗せ、今なお挑戦し続けているのでしょうか。その情熱の源泉と、研究の社会実装におけるリアルな道のりをお話しいただきました。
登壇者
・株式会社AGRI SMILE 代表取締役 中道 貴也 氏
・モデレーター:THE SEED General Partner 廣澤 太紀
【登壇者プロフィール】
株式会社AGRI SMILE 代表取締役 中道 貴也 氏
2017年京都大学農学研究科修了。
在学中は地元兵庫県丹波市に農業で貢献したいという思いから、農業資材の研究に取り組んだ。(対象資材は「第25回地球環境大賞」にて「農林水産大臣賞」を受賞。)社会ではビジネスの観点から農業を活性化させたいと考え、新卒で東証プライム上場企業の経営企画職として入社。その後、農業を通して各地域をより魅力的な場所にしたいという思いから、2018年8月、株式会社AGRI SMILEを設立。全国の150地域を超える産地連携や研究開発を主導し、Forbes 30 Under 30 Asia 2022 に選出。
【AGRI SMILE】
創業7期目、従業員80名、資本金約9.6億円、国内だけでなく海外においても事業を展開する農業領域のスタートアップ企業。
「テクノロジーによって、産地とともに農業の未来をつくる」を経営理念に最先端バイオテクノロジーによる生産技術、データサイエンス技術、産地のブランディング支援を展開。脱炭素社会の実現と環境保全型農業の実現が両立可能な画期的生産技術として期待される、農業残渣を原料としたバイオスティミュラント資材を、国内で初めて確立した産業の変革を目指すDeep Tech企業である。
■なぜ「起業」という選択肢を選んだのか-「情熱」の源と原点-
廣澤: 大学時代の研究を活かして起業されたと思うのですが、特に農業分野での起業は難しいと言われる中で、周囲から「やめておいたら?」と止められたりしませんでしたか?
中道氏: そうですね、むしろ好意的な話はあまりなかったかもしれませんね。「この領域でやるのは筋がいいね」とか「うまくいきそうだね」といった話は、逆に受けたことがないくらいです。ほぼすべて否定的な意見でしたね。
廣澤: なぜ、その領域での起業が難しいと言われるのでしょうか?
中道氏: シンプルに成功事例がないからだと思います。農業領域のスタートアップで大規模に成功した事例はまだほとんど見当たりません。あるいは日本だと創薬系でペプチドリームさんのようなプラットフォーマーはいますが、本当に自社で製品や薬のようなものを開発して製造まで担い、ゼロからファイナンスして成功した事例もあまりないのではないでしょうか。農業とディープテックの組み合わせは、さらにハードルが高いと見られがちでした。
廣澤: 確かに、私がお会いした頃の中道さんは「人生をかけて1兆円の農業の会社を作る」と熱く語られていたので、一度就職を挟んでいることが個人的には意外でした。なぜ最初から起業しなかったのですか?
中道氏: 当時は、大学院も保守的な雰囲気で、スタートアップに進むようなキャリアはほとんどありませんでした。その中で、リスクを最小化しながらリターンを得る「ミドルリスク・ミドルリターンみたいなキャリアがないかな」と探していたんです。そんな時、ある会社から「うちの会社でなら子会社の社長を目指せる」という話をいただいたのが就職のきっかけです。
廣澤: なるほど。まずはリスクを抑えた形で経営を経験しようと。しかし、実際に入社してみて、1年で退職し起業の道を選ばれたと思います。そこにはどんなギャップがあったのでしょうか?
中道氏: 当時、社長室というポジションで勤務するなかで、ギャップはありませんでしたが、実際に経営されている方々とお話しすることで自分が真にやりたい事業の解像度を上げることができ、自分自身でチャレンジすることにしました。前職の社長に大変お世話になり、純粋に憧れた部分もあるかもしれません。
廣澤: その「本当にやりたいこと」、つまり農業分野で解決したい課題とは、具体的に何だったのでしょうか?
中道氏: 実家が農業を営んでいた原体験が大きいです。農業は天候というコントロールできない変数に大きく左右され、非常に不安定です。虫や病気の被害がなくても、天候不順で収量が激減することも多々ありました。生産者の方々の苦労を目の当たりにする中で、この不安定さを解決したいという強い思いが芽生えました。
廣澤: その課題意識が、大学での研究とつながったのですね。
中道氏: はい。僕が大学院で研究していた頃は、遺伝子レベルで植物の作用メカニズムを解明する技術が非常にホットになっていました。当時「バイオスティミュラント」という言葉はありませんでしたが、農薬のように病害虫を「殺す」のではなく、植物自体を強くすることで気候変動などに適応させる「植物に刺激を与えて改善する」という研究が行われていました。特に、品種改良には長い時間がかかりますが、資材であれば即効性のある対策が可能です。実際に生産者の方の畑で試した際に効果がはっきりと見え、「この技術を社会に実装したい」と強く思ったことが起業の原点です。
■研究を社会実装するためのリアル-挑戦と困難-
廣澤: 農業と研究、どちらも事業化が難しいと言われる中で、実際に何が一番大変でしたか?
中道氏: 収益化が最も大変でした。誰にどんな価値を提供し、それが毎年継続できるのか。シンプルなことですが、農業と言ってもかなり広いため、事業モデルの構築が非常に難しかったです
廣澤:そこで中道さんはJA(農業協同組合)を主要な顧客とする戦略を選ばれたんですね。
中道氏:JA様との連携で事業の土台を作ろうと考えたんです。JA様は、生産者の皆様が組合員となり、出資によって運営されている協同組合です。地域の農業を支える重要な存在として日々活動されています。そのJA様と連携させていただくことで、生産者の皆様へより大き