「就職か、起業か」論争のその先へ。-bitFlyer創業者とも席を並べた元GSバンカーが語る、キャリアの偶然と必然
2025/08/21
「就職か、起業か」論争のその先へ。-bitFlyer創業者とも席を並べた元GSバンカーが語る、キャリアの偶然と必然
スタートアップ関西
イベント
シードVC「THE SEED」は、2025年6月28日に「スタートアップ関西 2025 春」を開催しました。
本記事では、イベントで行われたセッション2:プロフェッショナルセッションについてまとめています。登壇ゲストの森山氏が、大学院修了後に外資系投資銀行に就職され、その後独立に至るまでのリアルな経験談を交えて、就職と起業についてお話しいただきました。
登壇者
・Identity Academy 代表理事 / 株式会社デジタルガレージ 社外取締役 森山 博暢 氏
・モデレーター:THE SEED 浪尾 優希
浪尾: 森山さん、本日はよろしくお願いいたします。まずは自己紹介からお願いしても良いでしょうか。
森山氏: はい、こちらこそよろしくお願いします。僕は兵庫県の西宮で育ち、大学から東京に出ました。その後、1990年代後半に、当時まだ上場していなかったゴールドマン・サックスに入社しました。21年間働き続け、2020年の8月に退職しました。その後、金融のリスクマネジメントをベースに意思決定を訓練する「Identity Academy」というものを立ち上げました。このアカデミーは、大学生や大学院生向けにビジネスやリスクマネジメントを教えていて、起業家からアカデミアに進む人、ハリウッドのプロデューサーになる人まで、本当に多種多様な人材を輩出している選抜コミュニティです。
■キャリアの原点:最初の選択とその意味
森山氏: もしみんなが「起業するのと就職するのとどっちが成功するかな?」という思考回路でいるなら、就職した方がいいと僕は思いますね。一時的にネジが飛んだみたいに、ちょっとアホになるくらいの覚悟がないと、起業はなかなかうまくいきにくい。一方で、「何か面白いことしたいな」って思うなら、若いうちにやった方がいい。若さって本当に特権なんですよ。挑戦することで失うものはそんなにないと思います。
浪尾: 森山さんご自身の学生時代は、どのようなキャリアパスを考えていらっしゃいましたか?
森山氏: 僕は理系の大学院まで行っていて、また当時は終身雇用のレールが敷かれた時代でした。土木工学科、今の社会基盤工学科というところにいたんですけど、同じ学科の同期や先輩は、ゼネコンとか東京電力に就職するのが普通だったんです。でも、そのエスカレーターのようなキャリアが、どうにも面白くないなと感じていました。ちょうどその頃はゼネコン業界が「冬の時代」と言われるほど景気が悪くて、「このままレールに乗っていいのか?」という疑問も大きかったです。
浪尾: 周りのご友人の進路と比較して、何か感じるところはありましたか?
森山氏: よく遊んでいた友人たちは電通とかフジテレビとか、楽しそうなところにどんどん決まっていってました。「なんで俺だけ田舎のダムで働かなきゃいけないんだ?しかも給料半分くらいで?」というのが、すごくシンプルな疑問でしたね(笑)。せっかく大学から東京に出てきた身としては、ここから冷や飯を食うのは嫌だ、と。それで「もうやめた!」ってなったんです。僕は何か嫌になると、その真逆を選ぼうとするタイプなんですよね。真逆を選んでから、その中で折衷点を探す、という感じでした。
浪尾: その「真逆」が外資系だったのですね。
森山氏: はい。その頃はまだ「起業」という選択肢を全然知らなくて。僕はホリエモンさんと同じくらいの世代ですが、大学生の頃は身近に起業家なんて一人もいなかった。非連続で面白いこと、となると、ちょうど外資系というものが世に出てきていたんです。「首を切られるかもしれないけど、たくさんお金がもらえるかもしれないぞ」という話を聞いて、「そこしかない!」と思いました。外資系の中でもいろんなジャンルがある中で、経営コンサルなども受けましたけど、金融が一番荒々しいと聞きました。中でも、当時まだ上場していなかったけど、ちょっとマフィアチックな「ゴールドマン・サックス」という会社、その中でも一番「乗るか反るか」感が強い「トレーディング」という部署に突撃していきました。
浪尾: 金融に興味があったわけではなかったんですね。
森山氏: 全くなかったですね。トレーディングの部署が何をやるのかも全然知りませんでした(笑)。でも、就活で日本の会社は全部落ちたのに、外資系からはたくさん内定をもらえたんですよね。日本の会社の「黙って言われたことをやれ」みたいな、ブラック全盛期の時代の考え方にはフィットしなくて。「それって意味あるんですか?」というスタンスだったので、面倒くさいガキだと思われてたんでしょうね。
■「就職」という経験から得たもの-未来の
挑戦への土台作り-
浪尾: 実際にゴールドマン・サックスに入社してみて、どんな点が良かったと感じられましたか?
森山氏: 構図がすごくシンプルだったことです。生き残ればお金をもらえる。例えば、100億円稼いだのを1000人で分けるか、10人で分けるか、という話で、うちは10人で分けるような会社でした。もちろんすごく厳しいとは感じましたけど、毎日、毎月の目標設定がすごくクリアなんです。本社がニューヨークなので、極東で雇われたソルジャーみたいな感覚でしたね。目標は「出社して帰ること」じゃなくて、「稼ぐこと」。テストで85点を取るのが目標だとしたら、たくさん寝てもいいし、早く帰ってもいいし、帰る時間もバラバラでいいから、とにかく結果を残せ、という空気でした。働くことの意味を徹底的に叩き込まれたのは、本当によかったです。
浪尾: つまり、「仕事=成果を出す時間」という考え方ですね。
森山氏: そうです。アメリカでは会社は「株主のもの」という考え方が徹底されています。社長の想いなんてものはなくて、株主に雇われている経営者がいて、その下に金で雇われているソルジャーがいる。この構図を常に叩き込まれるので、ちゃんと成果を出せばたくさんの報酬がもらえるけれど、そうじゃなかったら...という現実も当然あるわけです。最近は日系企業でも外資系の考え方が徐々に浸透していて、僕が昔学んだ「シンプルだけどブラックだな」と思っていたルールが、今のスタンダードになりつつありますね。だから、「働くって何ですか?」と聞かれれば、「月曜から金曜の9時から5時までオフィスにいることではない」とい